昨今は、頭のトレーニングとか、脳の活性化といって、
手早く情報を処理する訓練が流行しているようですが、
何でもかんでも速く処理できればよいというものではありません。

音楽を聴くのに、早回しで聞く、なんてことをする人はいません。
映画を楽しむのに3倍速で早送りをして見る人や、
絵を観賞するのに大急ぎで走り回る人もいないでしょう。
何であれ、ものを味わうためには、それに適したペースがあるものです。

たとえば和歌を速読して、どんな味わい方ができるでしょう。
数学の公式の導き方を斜めに読み飛ばして、何が分かるでしょう。
わたしたちはいたずらに脳の活性化なるものを求める前に、
速さがもたらすものと、
速さによって奪われるものがあることを、
きちんと認識しなくてなりません。

さっさと計算をしたり、手早くメモを取ったりすることは
たしかに大切なスキルですが、
それは勉強全体から見れば、ほんの一部に過ぎません。
勉強でほんとうに大切なのは、
自分で分かる速さ以上に急がないことです。

ちゃんと理解する力はあるのに、
自分が理解できるスピードよりも速く進もうとするために
分からなくなってしまう、という子がたくさんいます。
とくに入試を意識する頃になると、とにかく制限時間内に解くことばかり
気にする生徒が出てきます。

入試直前ならばそれも必要なのですが、3年生の冬までは、
時間を気にせずじっくり取り組むことの方がはるかに重要です。