あの、ぼく、いるんですけど

少し遅めの昼食をとっていたら、
奥のテーブルに、
幼稚園児を連れた母親グループがいた。
携帯電話が鳴った。
ひとりのお母さんが
席を立ちながら電話に出た。
出口の方に向かったから、
そのまま外に出るのかと思ったら、
ドアの近くに立ち止まって、
そこで話をし始めた。
たしかにお仲間からは十分離れているけれど、
ぼくからは3メートルと離れていない。
話はまる聞こえである。
その人にとって、お仲間は気をつかうべき相手だが、
見ず知らずの他人であるぼくのことは、
まったく眼中にないらしい。
面白いものだな、と思った。
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もしかしてもしかして、
いま幼稚園児の母親になっているこの人は、
数年前には、かの「電車の中で化粧する女性」だったのかもしれない。
身近な人の視線はたいへん気になるけれども、
知らない他人のことはまったく気にしない、
というあの恐るべき若者たちが、
今、そのままのメンタリティをもって母親になっている、という
ことなのかもしれない。
子どもたちは(もちろん)、きゃあきゃあ声を上げながら、
客もまばらな店内を駆け回っている。
ふーむ。