さる御一行の行状

山梨の温泉に向かう途中、目の前にサルが飛び出してきた。
あぶねー。
クルマを停めてしばらく見物していると、
そいつはほどなく茂みの中に消えたが、
その後に次から次へと七八頭も走り出してくるから驚いた。
ちょうどそこは、山と里を行き来する通り道にあたって
いたのかもしれない。
彼らにしてみればいつもの通りの行動だったのだろうが、
しかし不幸にして人間様の世界はいつもとは違っていた。
なんせお盆休みである。
日頃はサルが行き交うのんびりした田舎の道も、このとき
ばかりは行楽地に抜けるメインルートになってしまっていた。
ほとんど切れ目なくクルマが走り抜ける状況に、
ご一行様はすっかり戸惑っているようだった。
いきなり飛び出したり道の真ん中で立ち止まったり、
危なっかしいったらない。
体を硬くしてしばらく見ていたら、案の定、
一匹ぽんっとはねられてしまった。
引っかけられたようなかっこうでころころっと転がったかと
思うと、そのまま藪の中に見えなくなった。
しかし、あのはねられ方では相当のケガをしただろう。
ケガをした猿が、どんな風に生きていくのかは知らない。
面白がって見ていただけなのだが、
どうにも悪いことに荷担してしまったような気分になった。