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天然記念物

柴犬は「しばいぬ」なのか「しばけん」なのか。調べようと国語辞典を引いてみた。するとなんと。

しばいぬ【柴犬】体形は秋田犬に似て、小型の日本犬の通称。耳は立ち、尾は巻く。天然記念物。(新明解国語辞典七版)

とある。天然記念物!
天然記念物といえば、トキとかイリオモテヤマネコとかヒトカゲとかフシギダネのような、珍無類なものだけが選ばれるものだと思っていたのに、普通の権化たる柴犬が指定されているなんて、ちょいと驚きではないか。

もしかして天然記念物というのは、モンドセレクションとか、グッドデザイン賞とかモナコ国際映画祭のようなもので、ものすごく大したものだと思われがちだが、いわゆる、その、実はけっこうあれなやつなのかも知れない。

もう少し調べてみよう。

きねんぶつ【記念物】文化財保護法上の文化財の一。学術・歴史・芸術などの上で価値の高い遺跡や名勝地、動物・植物・地質鉱物。(大辞林四版)

なるほど、天然記念物とは、「天然が記念する物」とか「天然を記念する物」ではなく、「天然の文化財」ということだったか。こんな難しい言葉なのに、この言葉を知らない人がいないというのも、思えば不思議なことである。学校教育というのは意外と偏りがあるものだ。

不思議といえば、こういう例もある。
天然記念物の中でも、世界的に価値の高いものとして指定される国の特別天然記念物というのがある。動物ではタンチョウとかカワウソなどの21件だけだそうだが、この選び抜かれた記念物の中に、どういうわけか富山湾のホタルイカが入っているのだ。

食い物なのに特別天然記念物。
どう見ても無理筋な位置付けと思われるが、貴重なのはホタルイカそのものではなく、「ホタルイカの群遊海面」である、だからイカそのものは食べていい、という理屈らしい。そのおかげで、富山県は漁業と観光で潤い、われわれはおいしいイカを堪能することができるのだから、まあありがたいことである。

だが、それじゃいったい何のための指定なのか、訳がわからない。
保護はしたいがうまいものは食いたい。胸にしみる話ではある。