言うまでもなく、塾は成績を上げるための所です。
楽しく愉快に過ごしてもらうための場所ではありません。
しかし、だからといって、
動物に芸を仕込むがごとくひたすら反復練習させたり、
競争心をしゃにむにあおったり、 大きな声で怒鳴りつけたりして、
無理やりに成績向上に向けて駆り立てるだけの場所であってはなりません。
青臭い考えかもしれませんが、
わたしは、塾は成績を上げる場所であると同時に、
勉強の楽しさ、素晴らしさを紹介する場所であるべきだと思っています。
勉強の面白さ。
それは、たとえばテレビを観る面白さなどとはまるで違います。
数学も、英語も、国語も、理科も、社会も、
みな長い歴史と不思議と秩序に充ちています。
そして、それだけではなく、
勉強という行為そのものが、またじつに楽しいのです。
やさしめの問題をすらすら解き進めるときには、量をこなす楽しさがあります。
未知の知識に出会ったときには、世界の見え方が広がったような喜びがあります。
難しかった問題が、整然と秩序だったものとして理解できたときには、
隠されていたものの美しさに、思わず声をあげたくなります。
できないあせりやみじめさを乗り越えたときには、
自分のことが、ちょっぴり誇らしく思えます。
こうした喜びの多くは、勉強でしか得ることができないものです。
テレビを観ているときには、けっしてこんな風にはなりません。
テレビを観ているときの自分が大好き、なんてことはありません。
勉強には、価値あることに向かって努力することによって、
はじめて得られる楽しさがあります。
わたしの指導の第一歩は、この楽しさを伝えることです。
脅すのではなく、危機感をあおるのでもなく、
競争心に訴えるのでもなく、
まず、勉強の楽しさを予感させてやりたい。
そんな風に考えています。