江戸時代の見世物小屋の規模や迫力は、おそらくわれわれの想像をはるかに超えている。竹で人形を編んだ籠細工(かございく)がとくに人気だったと聞くだけではぜんぜん大したことがないように思えるが、とんでもない。なにしろ見世物小屋の規模は奥行きは40メートル、籠細工の大きさとなると小は2メートル、大は8メートルにも達したという。そうした巨大な英傑の人形が20も並んで頭上を圧し、見せ物の前では当代きっての話芸の達人が軽妙な口上を述べている、というぐあいなのだから、その華やかさ楽しさはどれほどのものだっただろう。百日の会期に数十万人もの人が押し寄せたというその熱狂は推して知るべしである。ほかにも珍しい動物あり、軽業あり、本物そっくりの生人形(いきにんぎょう)ありで、読むほどに、当時の沸き立つような興奮が伝わってくる。