E・Hゴンブリッチ「美術の歩み」

美術史の本として、これほど読みやすく面白い読み物をほかに知らない。14世紀にジォットが出るまでは、絵描きは職人としか見なされず、どんな名匠も後世に名が残されることはなかったとか、ブルネレスキが遠近法を発見するまでは誰も地平線に消えるまで先細りに続いていく並木を描くことができなかった、などといった意外なエピソードの面白さもさることながら、絵画や建築の変遷を語りつつ、人間の意識そのものの移り変わりをゆったりと描く筆致がすばらしい。