今週中にも安保法案が可決されようとしている。国民の大多数が反対していても、学者の大多数が意見とみなしても、いわば何となく、まあいいじゃないか的ないい加減さで、今まさに、とてつもなく大きな転換がなされようとしている。本書は、社会がこのようにじわじわと変容してきた様をさまざまな視点から考察しているが、その底にあるのは怒りというより悲しみのようだ。冷たい分析ではなく、熱い扇動でもない。ただ良心にしたがって、ありのままを悲しみつつ書いているような印象を受ける。
良くも悪くも「論壇時評」がもとになっているだけに、一つ一つの文章が短く、引用も多い。こうした形態で語れるのは、ごく表層のことだけだろう。この人が存分に語ることばを聞いてみたい。