1956年の衆議院での公聴会の議事録である。議事録そのものだから、新聞やテレビやネットの記事とは違って書き手の編集が紛れ込んでおらず、自分の頭で判断しながら読めるのがありがたい。
今日の特定秘密保護法や安保法制をめぐる議論が、60年近く前にほぼ同じ形でなされていたことがよく分かる。憲法改正に反対する戒能通孝は、「内閣には憲法改正を提案する権限がない」「国務大臣は憲法擁護の義務を負っている」という指摘をし、中村哲は憲法改正案は「基本的人権を旧憲法時代に戻す」「再軍備のため」のものと批判する。今と驚くほど変わっていない。改憲護憲いずれの立場であっても、議論の根底に横たわっているのは、日本は敗戦国でありアメリカの意向からは自由でいられないという事実である。今もなお、この事実を抜きにして憲法や安全保障を語ることはできない。