橋本治の本は、ちゃんと読めば面白いんだろうな、と思いながらもなかなか乗れず、結局おもしろくないまま途中で投げ出すことが多い。しかし、これは文句なしの傑作。かの徒然草に現代語訳と兼好の語りによる背景説明を加えた本、といっても面白さは伝わらないだろうから、有名な「つれづれなるままに…」の橋本訳を紹介しよう。
「退屈で退屈でしょーがないから一日中硯に向かって、心に浮かんでくるどーでもいいことをタラタラと書きつけてると、ワケ分かんない内にアブナクなってくんのなッ!」
なるほど、徒然草というのは、七百年たった今でこそりっぱな古典だけれど、当時としては今のことを書いた生身の文章だったんだねえ。