表題から分かるとおり「動物裁判」の本である。動物裁判というのは、動物を人間と同じように裁判にかけ刑を執行することで、中世から19世紀にかけて、ヨーロッパでさかんに行われた。裁きの対象は四つ足の動物だけでなく、イナゴや毛虫やシラミ、さらには謀反の合図に使われた鐘、倒れて人を押しつぶした銅像などにも及んだ。これは冗談でも何でもなく、昆虫を被告にした裁判であってもきちんと弁護人が立てられ、大真面目に弁論がなされたのである。きっとその当時から、これをばかばかしいと思っていた人は多かったろう。しかし神の名のもとに行われる神聖な裁判を誰が非難できただろう。こんな裸の王様ばりの滑稽なことが何百年も続いただなんて、さぞ重苦しい時代だったんだろうなあ。