前著「<子ども>のための哲学」とは違い、この本はどうやら本当の子どもを対象にしているらしい。ある正しい答えを教えるのではなく、問いを問いのままぶつけ、子どもにものを考えさせようという目論見の本である。明快な結論=安っぽい道徳を並べた本ではないから、覚悟を決めて向かい合わない限り、どこを読んでも宙ぶらりんの気分にさせられてしまう。正解のインプットとアウトプットだけに明け暮れている「賢い」子どもたちにとって、こういう読書は想定の範囲外だろう。かつて売れに売れた「ソフィーの世界」は哲学ではなく哲学史の本だったが、こいつは読み手の力量次第では、ほんとうに哲学の本になりうる作品だと思う。