80年前に書かれた少年のための人生読本。15歳の少年コペル君がさまざまな経験を通して道徳を考え、生産関係に気づき、自分の弱さに打ちひしがれながら、人間的な成長を遂げていく物語。物語といっても、ここで本当に語られているのはストーリーではなく、人としての生き方である。何ごとにもまっすぐ向き合い、とことん考えようとするコペル君も、大人の知恵をもって常に彼を支える叔父さんも、今となっては「ありえない」人になってしまった。一時流行した「なぜ人を殺してはいけないのか」などという不毛な問いを思い出すにつけ、こんなにまっすぐ人としての生き方を語れた時代が羨ましくなってしまう。