波多野精一「西洋哲学史要」

明治34年に書かれた哲学史の名著。「かくのごとき明々白々たる矛盾を発見するには必ずしも炯眼と達識を要せざるなり。しかもカントの大頭脳にしてその矛盾に陥りて恬然たりしものは何ぞ」なんていう名調子にしびれる。この本には最近、現代語に書き直されたバージョンが出ていて、そちらを参照しながら読むと分かりやすいが、文章そのものの力という点では、やっぱりオリジナルに及ばない。文語の強さと格調の高さに惹かれ、音楽を聴くように読んでしまった。