渡邊十絲子「今を生きるための現代詩」

今年読んだ新書の中で、飛び抜けて優れた一冊。居酒屋の看板やマンションの広告にならぶ文言や、やたらと人を励ましたり癒やしたりするはやりの歌のコトバとは違った、ほんとうの詩の世界を見せてくれる。詩人が詩を解説すると解説する言葉までが詩のようになってしまい、けっきょく何も伝わってこないことが多いが、この本にはそういうところがない。詩を読むという行為をこれほど丁寧に体験させてくれる本は貴重だ。現代詩は、ただ奇をてらっただけの無意味な言葉の羅列ではないということを、はじめて納得させてくれた。