ロバート・K・G・テンプル「中国の科学と文明」

中国というのはすごい国だ。われわれが何となく「進んだ西洋のもの」と思いこんでいる発明・発見の多くは、実は中国でなされたものなのだ。F.ベーコンの言葉によって有名になった「紙・火薬・羅針盤」だけでない。17世紀のヨーロッパに農業革命をもたらした鉄製のすきは中国でははやくも紀元前6世紀に使われていた。向かい風でも帆走できる船は、中国で作られてから1300年もたってやっと西洋にもたらされた。円周率を小数十位まで計算したのは西洋人よりも1200年早く、二項係数を求める「パスカルの三角形」ですら、パスカルに先立つこと500年には発見されていた。これほど進んでいた国がどこでどうして凋落してしまったのか、今度はその秘密を知りたくなってくる。