高校の古文という科目は評判が悪い。理由は明快、つまらないからである。とくに文法というのは今も昔も見事なほどつまらない。で、この本を読むと、つまらない原因の過半は教える側の不勉強にあるのだろうと見当がつく。なにしろこいつは文法の本のくせにやたらと面白いのだ。たとえば推量の助動詞の説明は、むかしの日本人の時間の概念から始まって、ほとんど謎解きのようである。動詞の活用形はこうこうこのような変遷をたどっているから、何百年たったら日本語の活用はこのようになっているだろう、なんて大胆に推論をするくだりにもわくわくする。国語の教師はこの本を読んで、歴史的な言葉を扱うには歴史的な視点が必要だという当たり前のことを学ぶがよろしい。