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お湯も沸かせない大学生

まったく自慢にならないが、
ぼくは昔から、大変おぼえが悪い。
記憶力が悪いという以上に、
対象に馴染むまでに非常に時間がかかるのだ。
勘が悪いと言うべきかもしれない。
だからはじめてのことをしようとすると、
最初はほとんどついていけない。
誰もが当たり前にできることが、まったく、
本当にまったくできなかったりするのだ。
言われたことに、
なかなかチューニングが合わない。
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学生のころアルバイト先で、
お湯を沸かしておいてくれ、と言われたことがある。
今となっては信じられないが、
そのときぼくはこの簡単な指示が、まったく理解できなかった。
お湯って、どういう?
沸かせって、どうやって?
沸騰させるのか?
それとも温かいお湯がほしいのか?
飲むのか?
調理に使うのか?
掃除につかうのか?
それとも加湿に?
小さな鍋で?
大きなヤカンで?
まずきれいに洗わないとだめなのか?
それとも?
なんてことがまったく分からず、
しばらくぼんやりと突っ立っていたのである。
まったく間抜けな話である。
その後1週間でクビになったが、
そりゃそうだろう。
なかなか分かってくれない子を教えるときに、
よくこのことを思い出す。

便利なのになー。

引っ越しのときの大掃除で、
行方不明になっていた単眼鏡が発掘された。
ばんざい。
これは、仏像を見に行ったり、
博物館に出かけたりするときにとても便利で、
遠くの物を見るときはもちろん、
20センチくらいからピントが合うから、
細かい細工を拡大して見るときにも重宝する。
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昨日たまたま中学生に理科を教えていたら、
地層を観察するのに必要な道具を選べ、
という設問があった。
まったく分かり切ったことをきくもんだ。
そりゃ望遠鏡だろう、と答えたら、
意外や答はバツだった。
なぜなぜ、ほわーい?

本は買って読もうぜー

本は、高い。
本は、場所をふさぐ。
散らかる。
その上、めったに読み返したりしない。
だから図書館で借りるんだ。
そうすれば、お金もかからないし、場所もふさがない。
たとえハズレを引いても、損をしない。
ぜったい自分じゃ買わない本に、
思わぬ拾い物があるかもしれない。
借りてみて、面白かったら買えばいいじゃないか。
って言われれば、
たしかにそのとおりなんだけどねー。
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しかし、
人によってさまざまなのかもしれないが、
ぼくは本というのは、
やっぱり買わなきゃいけないと思う。
書棚に並んだ背表紙を眺めているうちに、
なぜかしら本の存在が迫ってくるようなときがあり、
その一瞬の気の高まりをとらえて、
さっと手に取る。
そんな瞬間がないとなかなか読めない本も多いし、
何よりも簡単に読める状況にないと、
本に親しむことは難しい。
ぼくたちがテレビをよく観るのは、
なぜなのか。
おそらく面白さだけではなく、
リモコンひとつでごく簡単に観ることができる、
という事情も大きいだろう。
同じように、
読書の習慣をつけるということは、すなわち、
すっごく読みたいわけではないのに読んでしまう、
という習慣をつけることだから、
図書館に出かける、なんていう面倒くさい手続きは
できればない方がいい。
ちょっと手を伸ばせば本が取れる、
というカンタンさがきわめて重要なのだ。
今読んでいる本は、
買ってから読み始めるまで何ヶ月もかかった。
どのページも傍線でいっぱいである。
風呂で読んだりするからぼろぼろである。
よく分からないから何度も同じところを読み返し、
上巻だけでかれこれ1ヶ月である。
こんなこと、図書館の本でできるだろうか。

ちょいと散歩に

教室から歩いて十分もかからないところに、
大きな公園がある。
今日は天気も良かったし、
遠足に来た幼稚園児や小学生でいっぱいだった。
明るくにぎわう公園をそれて、
雑木林の中を歩いてみた。
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暑い日だったけれど、
林の中は薄暗く、ちょっと涼しい。
花もつけないただの葉っぱも、
よく見ると、きれいなものだよね。
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字のじょうずな子がいた

大坪くんと同じクラスになったのは、
小学校の3年生か4年生のことだった。
大坪くんは字がきれいだった。
先生も友だちも、みんながほめた。
ほんとうに字がきれいだね、と
言われているうちに、
大坪くんはますます丁寧に書くようになった。
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ていねいに、ていねいに。
ゆーくり、ゆーっくり。
とうとう大坪くんの字は、
ゆっくり書きすぎて、
ぷるぷる震えるようになってしまった。
きれいに書こうとすればするほど、
ぶざまに震えてしまうのだ。
子ども心にも、あれはちょっと怖かった。
大坪くん。
人はね、君が思っているほど、
君のことなんて気にしていないんだよ。
誰かがそう言ってやればよかったんだろう。

ぶんぶんぶん

連日の引っ越し準備で疲れ果てたので、
弁当を持って、ちょっと気分転換。
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万博ですっかり変わってしまった青少年公園には、
不思議なくらい撮りたいものがない。
植えたばかりの木がひょろひょろ立っていて、
芝生広場は人工芝。
280円もするカレーパンは、ひどくまずかった。
それほど歩いてもいないのに、ずいぶん疲れてしまった。
そのくせなぜか、気分は上々。
やっぱり外に出るのはいいね。

のろし

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ほらほら、のろしみたいだろって声をかけたら、
のろしって何?って言われた。
そうだよなあ。
今の子は、のろしなんて見たことないもんなあ。
ってか。

雨のち曇のち晴のち雨のち晴のち

変な天気だ。
きょうは小学校は遠足。中学校は写生会。
薄日が差して何とか持ち直すかと思ったら、
突然のどしゃ降りだった。
あれじゃずぶ濡れだったろう。
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雨がやむと、公園の白い花がきれいだった。
写真を撮っていたら、
白髪のおばさまに声を掛けられた。
ナンジャモンジャですかね。
雨上がりはきれいですねって。

自制心なし。

どちらかというと、
気に入った服は毎週着て、
気に入ったビデオは何度も見て、
気に入った曲は毎日聴く、というような
自制心のない楽しみ方をする方だ。
2、3年前だったか、
ザ・バンドの「ラストワルツ」を毎日毎日
推定百回以上見続けたことがあるが、
今のお気に入りは、チョン・キョン=ファの
弾くベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。
これもまた毎日毎日まーいにち聴いているから
おそらく50回以上にはなるだろう。
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で、これからどうなるかというと、
あんまり聴きすぎて、
ある日突然飽きてしまうことになる。
そしてこの飽き方たるや大変なもので、
ほんの少し耳にするだけで
ぶちっとスイッチを切ってしまうくらい、
とことん嫌になってしまうのだ。
そういう末路が待っていると知りつつも
やめられない。
やっぱり自制心がないんだろうなー。