フジテレビが何日か前に放映した「ダビンチコード」の
スペシャル番組を観た。
ひどい番組だった。
そう言えば小学生が、モナリザって誰だか知ってる?
なんて訊いてきたが、出所はここだったか。
映画や小説は、エンターテイメントの中に荒唐無稽な風説が
織り込まれているだけだから害は少ないが、
このテレビ番組のように「暗号」やら「謎」そのものだけを
取り上げるとなると、話はまったく違ってくる。
どんな馬鹿げた話でも、2時間もかけて繰り返されると、
何だか根拠があるような気がしてくるものだ。
プロパガンダの真骨頂である。
大人ですら真に受けかねないのだから、
子どもだったらひとたまりもないだろう。
子どもは一般に時間の感覚が非常に粗いので、
この番組を観た子の相当の割合は、
レオナルド・ダ・ヴィンチとイエス・キリストを
だいたい同じ時代の人、と感じたはずだ。
言うまでもないことだが、
ダ・ヴィンチはイエスよりも1500年も後の時代の人である。
今のように聖書学が発達しているわけでもない時代に、
1500年前の外国のことを想像して描くというのは
どういうことか。
それはたとえば、今のヨーロッパの人が聖徳太子より
もっと前の日本を想像して描くようなものだから、
いくら素晴らしい芸術であっても、
そうやってできた作品が「事実の記録」なんてことは
ありえない。
山海経に描かれているからといって、
むかしの中国にはこんな妖怪がうようよしていた、
という推論が成り立たないのと同じことだ。
こんな当たり前のことすら忘れさせてしまうんだから、
テレビもなかなかおそろしい。
国民を馬鹿にする(馬鹿・にする)番組ってのは、
こういうのを言うんだよな。