狭い路上に、車が一台停まっていました。
赤い車としておきましょう。
中には人が乗っています。
路肩はかなり余裕がありました。
そこにうしろからもう一台の車がやってきました。
青い車です。
広い道から右折してきたら、そこに車が停まっているのですから、
じゃまに違いありません。
それでも上手に角を曲がって、
そろそろと横を過ぎようとしたそのときです。
どんっ。
大きな音がしました。
気の毒に、右側に寄りすぎて、電柱にぶつかってしまったのです。
ワイパーがしゃかしゃかしゃかしゃか動きます。
ライトのレンズも割れてしまったみたいです。
青い車の人は、
ほんの少しその場に停まっていましたが、
降りて具合を確かめることもなく、
赤い車に文句を言うでもなく、
ワイパーをしゃかしゃか動かしたまま、
静かに走りさって行きました。
ぶつけてしまった人はもちろん、
ぶつけさせてしまった人も、気の毒でした。
悪気なんかこれっぽちもないのに、
人に迷惑を掛けて、恨まれてしまう。
誰にだって起こりそうなことですよね。