拝殿の前に集まってくる人を
見るとはなしに眺めていた。
小さなバッグをたすきに掛けた年寄り夫婦。
玉砂利の上で足を引きずり、
疲れた足跡を残すおじさん。
手をつないだ若いカップル。
細身のスーツを着て
髪の毛を立てているおにいさん。
さっそうと歩く胸板の厚いビジネスマン。
こういう人たちが、
鳥居のところに来ると、
足を止め、姿勢を正し、
それはそれは美しいお辞儀をするのだ。
鳥居をくぐる人も、出てくる人も、
かかとを揃え、背中を伸ばしてすっと礼をする。
驚いた。
長く生きてきた人には相応の経験があり、
足を引きずるおじさんは疲れ果て、
恋人たちの気持ちは浮き立ち、
きびきび歩く背広の人は自信にあふれている。
そうした人たちが、
それぞれの自意識をいったん置いて、ただ謙虚に頭を垂れる。
おれがおれが、ばかりの世間にあって、
まだこんなに美しい姿が残っていたのかと思ったら、
分別も、理屈も、どうでもよくなってしまった。