古い古い記憶で出処も定かではないのだけれど、
とあるマンガの中で、
土地を売って儲けた百姓のじいさんが、
金の価値も分からないまま、
ひょうひょうとして途方もない無駄金を使う、という話があった。
その中でも、
フェラーリを買ったがすぐに飽きて、
乗らずにニワトリ小屋として使ってしまう、なんていう
エピソードが強烈で、忘れられない。
「フェラーリでニワトリを飼う」とは、すなわち、
物から価値という仮構をはぎ取り、裸にする行為である。
さて、こちらの画像は、バーバリーのジーンズである。
ジーンズメーカーとしては有名なのか知らないけれど、
そこはやはりバーバリー、定価は2万円くらいするようだ。
さすが高級感にあふれていますね。
ぼくはこれを今日手に入れたところなんだが、ふふーん、
じつは、掃除のときの作業着に使おうと思っているのである。
ほこりまみれになりそうなときや、水が跳ねて汚れそうなときには、
このバーバリーに履き替えるのだ。
フェラーリでニワトリを飼うみたいだろ。わはははは。
ま、それほど引っ張るようなネタでもないので、あっさり書くと、
このジーンズ、なーんと300円だったのです。300円。
びっくりっしょー。
ちょっとした汚れと破れでジャンク扱いだったのだが、
そもそもジーンズってもんは、
ダメージ加工だのペイント加工だのわざわざ汚して破ったヤツを
売っているくらいだから、本来この程度の傷みは、
商品としての価値をゼロにしてしまうものではないはずだ。
ではなぜ、2万円でちやほやされていたはずの人生が暗転して
300円になってしまったのか。
この子自身も分かっていないに違いない。
まったく、物の価値というのはじつに不思議だ。
材料費とか、加工時間だとか、そんなものとは関係なく、
2万円のジーンズは2万円だから2万円であり、
2千円のジーンズは2千円だから2千円である。
そして、
このあいだまで2万円の価値があると認められていたジーンズも、
今日300円と言われれば、
ふしぎなことに300円にしか見えなくなってしまうのだ。
ああ、まるで人生の浮き沈みを見ているようではないですか。
フェラーリでニワトリを飼うじいさんの強烈さに
隠れがちだけれども、
いきなりニワトリ小屋にまで落とされたフェラーリの気持ちにも、
こう考えると深いものがあるよねえ。