毎日のんびり暮らしていたら、
いつの間にか、世界が変わっていた。
内閣が、与党が、
衆人環視の中、堂々と、
憲法を無視し、
採決の手続きを無視し、
権力を振るう。
こんな光景を目にする日が来るとは思ってもみなかった。
一生をただのんきに生きていたい身としては、
悪夢のような光景である。
安保法案は、あるいはわが国の安全保障に資するものなのかもしれない。
国際協調の観点から、あるいは経済的な利益を考えても、
ありうる選択なのかもしれない。
しかし、問題はそういうことではない。
法案の中身の是非以前に、
これほどまでに手続きが軽視されている。
そしてそれが通用してしまっている。
このことが、衝撃だった。
多数決でことを決するのは当然だし、
国会前のデモに耳を貸さないのも、政権の判断としてあり得るだろう。
しかし、憲法を無視することは許されない。
手続きを無視することは許されない。
なぜなら、
地味な、つまらない、杓子定規な手続きこそが、
もっとも確実に作動する安全装置だからだ。
権力の暴走を止めうるのは、英雄的な正義などではない。
例外なく、決められたルールを愚直に守る、
そんな頑なさに他ならないからだ。
この許されないはずのことが行われただけでなく、
目的のためには手続き上の瑕疵は問題にならないという、
近代国家にあるまじき行いが、けっきょく通用してしまった。
なんということか。
こんな日が現実に来るとは思っていなかった。