芸術はきびしい

芸術選奨なんやら賞を受賞したワダ先生の作品に、
盗作の嫌疑がかけられている。
まったく失礼な話である。
盗作というのは、誰かの作品から作品を構成する
重要な要素である構図やモチーフといったものの
一部をいただいちゃうことを言うのである。
そういう視点から冷静に見れば、
ワダ先生の一連の作品がそれに当たらないことは
明らかだ。
ああいうのは、盗作といわず、模写という。
盗作にもならないろくでもない模写が、
芸術選奨文部科学大臣賞なんていう立派な賞を
もらえちゃったという事件は、
画家のモラルがどうこうというよりも、
世界の隅々にまで張りめぐらされているはずの情報の網が、
実はスッカスカだったということを示した点で、
とても興味深いものだった。
それにしても、ゲイジュツの世界ってのはきびしい。
ほかの学問なんかだったら、海外の研究をそのまんま紹介
するだけで学者さんとして認めてもらえるわけだけど、
それと同じことをしたら盗作って言われちゃうんだもんな。
自動車のライトがそろって意地悪そうな吊り目になったのは、
みんなが誰かのデザインを「取り入れた」からに違いないが、
これを盗作という人はいないし、
悲恋を描いた小説にやたらと白血病が登場したり、
日本語の歌を誰かの真似して巻き舌で歌ったりしても、
盗作とは見なされない
そういえばゴッホが浮世絵を真似して描いた作品があったが、
あれを盗作と言う人もいない。
誰かのオリジナルな着想をちゃっかりいただいちゃうという点では、
こういうものも盗作と変わりないように思うんだが、
なかなか線引きは難しいようである。
で、ぼくなりにいろいろ考えてみた結果、
「作品を見比べて腹が立ったら盗作」
という基準に思い至った。
なかなかよくない?