どうにもケチのつけようがない正論というのは、息苦しい。
たとえば大きな事故が起こったとき、
いったいどんな管理をしていたのかと詰め寄ったり、
自社の責任をなかなか認めない会社の態度に
怒声を浴びせたりするのを見ると、
うん、そりゃまったくそのとおりなんだけど
と、なんだか居心地の悪い感じがする。
この嫌な感じの正体は、
逃げ場を与えず他人を責める容赦のなさに対するものなのか、
さも正義の味方のような顔をして
他人事に割り込んでゆく無神経さに対するものなのか、
それとも水に落ちた犬に群がってわけも分からず打ちすえる
匿名の残酷さに対するものなのか、
自分でも釈然としないのだけど。
ただもし
「なんぢらの中、罪なき者まづ石を擲て」と言われたならば、
ぼくは石を捨てて悄然と立ち去るだろう、とは思う。
それがときとして、正義を見過ごす卑劣な行いにあたったとしても、
仕方がないんじゃないだろうか。