モーツァルト十時間百曲入り三千円、というすごいCDを見つけた。
買ってからアマゾンなら2400円だとか、
HMVでは40枚組4千円台のモーツァルトがあるなんて事実を知って
やや喜びも減じたが、ここまで安ければまず文句はない。
で、近ごろはずーとそいつを聴いている。
この手の音楽を聴いていたのは中学生のころだから、ざっと30年ぶりか。
当時はFMファンだのFMレコパルだの週刊FMだのといった雑誌があり、
番組表をつぶさにチェックして、片っ端から録音していたもんである。
わざわざレコードコンサートなるものにも足を運んだり、
子ども向けの安い演奏会があるとひとりで出かけたりもした。
思えば、ずいぶんな背伸びだが、
よい趣味や高い教養なるものに憧れる少年時代というのも、
悪いもんじゃないだろう。
「モオツァルトのかなしさは疾走する。涙は追いつけない」とは
小林秀雄の言である。
音楽に限らず芸術というものは、鑑賞する人が内にもつ美と共鳴して
はじめて本当の姿をあらわすものらしい。
いつか彼のように聴けたら、と願わずにはいられないが、
三千円でそれは、さすがに図々しいよなあ。