ま、ぼくは男だから、いつでも素顔のわたしなんだが、
女性はふつう、
お外に出るときは化粧を整えるってことになっている。
さて、すると女性にとって、
素顔とお化粧の顏のどっちが本来の姿なんだろうか。
素朴な感想としては素顔が本来の姿と思いがちだけど、
どうなんだろうね。
たまたま部屋を散らかしているとき、来客があったとしよう。
きっと、
ふだんはもっとちゃんとしているのに、って思うだろう。
大あくびしている瞬間を写真に撮られたら、
ほんとは私はそんなんじゃないのに、と憤るだろう。
これはつまり、
しっかり意識して、見られる姿を整えているほうを
「ほんとう」と感じているからだ。
だったら女性にとって、きちんとお化粧をした顏が、
この意味で言う「ほんとうの姿」ってことになる。
明るく華やかな顔をしている人が、
化粧を落としたら
地味でつまらない顔になってしまうとしても、
それは、ほんとうは地味でつまらない顏、なのではなく、
つまらない顔のようにみえるけれど、
ほんとうは明るく華やかな顏、なのだ。
女性に限らず、人のほんとうの姿は、
くつろいだ=油断しきったおうちの顏であるよりも、
自分の意志で作り上げたよそ行きの顏の方だと思った方が、
何かとよいような気がする。
もし、何も手を加えないそのままの状態の方を
自分と規定するならば、
意識の制御を離れ、がーがーいびきをかいて寝ている姿が
いちばん自分らしい、ということになってしまうけど、
それは、違うでしょ。
自分で意識して作り上げた姿こそがほんとうの姿、
見せたい姿が本当の姿、
と考えるほうが、よほど自然だ。
ふだん人目につかないような、
人間の汚い愚かな狡い弱い見苦しい残酷な部分を
ことさらに描き出して、
これが人の真実だ、なんていう顔をしている
文芸作品もあるけれど、
こういう視点に立ってみると、
そうと決まったもんじゃないって気がする。
トイレに座っている姿がいくら情けなくても、
だから人間は情けない存在です、
なんていう結論にはならないように。
この方がよくない?
明るい感じがしてさ。