よく知りませんが、それはね。

某巨大通販サイトの「カスタマーQ&A」をときどき見る。そのたびに、こう、人間というものの不思議さというか、分からなさというか、ちょっと名状しがたい不安に襲われてしまう。「この商品の使い勝手はどうですか」→「使ったことがないので分かりません」「この商品はポリエチレン製ですか」→「私には分かりませんので、メーカーにお問い合わせください」というように、知らないことについてわざわざ発言する人たちで溢れているのだ。

いったいこの人たちは、何がしたくてこのような回答を投稿するのだろう。知らないことに対して、なぜ発言したがるのだろう。インタラクティブなインフォメーションカルチャーが生み出したニュータイプの一言居士ですか?
と、かねてから不思議に(より正確には、ばっかじゃなかろかと)思っていた。のだが、じつはこうした謎の回答群の背後には、ちゃんと納得のいく事情があったのでした。

その事情とはこうである。
このサイトでは、ある商品に質問の書き込みがされると、以前商品を買った人たちにその質問が送られる仕組みになっている。そこでこの問い合わせメールを受け取った人たちが、あらまた来たわ、しょうがないわね、えーと「私に・聞かれても・分かりません・ぽちっ」と律儀に返信しているのであった。のです。

いや、ちゃんと事情も調べずに、軽々に人をバカ扱いするものではない。この人たちは聞かれたことにちゃんと答える善良なみなさんで、バカなのはそういうシステムをいつまでも見直さない某巨大通販サイトのほうだったのだ。

ところでTwitterなどを眺めていると、ここでも知らないことを堂々と発言している人がたいへん多い。ウイルスとバイキンマンの区別もつかないような人が、きょうも感染拡大防止の方法を巡って見知らぬ誰かを罵倒している。知らないことなら黙っていればよいものを、とりあえず何かを言いたがるのはどうしてだろう。勉強したこともない事柄をどういうわけか知っていると信じ、その確信に基づいて会ったこともない人を憎み、ののしり、果ては恥ずかしげもなく専門家に意見してしまえるのはどうしてだろう。

頭を使わず声だけあげるあの人たちにも、やはりそれなりの事情があるのだろうか。それともこういう人たちのことは、ただバカ扱いしておけばいいんだろうか。