全国の相当数の高校で
文科省が定めた必修科目を教えずにいたことが
問題になっている。
受験に必要のない科目を教えず、
その時間を他の科目の授業に振り替えていたのである。
いかにもありそうな、というか、
やってて当たり前じゃんというのが率直な感想だが、
もちろんここにそんなことを書いたりはしない。
塾の主宰としての良識である。
さて、それはともかく、
いったんことがバレてしまった以上、
当該高校の生徒は必修科目を履修しないかぎり
卒業させるわけにはいかない、という。
そのために高校はこれから70時間もの補習をして、
きちんと卒業要件を満たすってんだから、
なんとも気の毒な話である。
今さら言うまでもなく、
受験を間近に控えた高校3年生にとって、
この70時間はとてつもない障害となる。
受験には何の役にも立たない科目なのだから、
補習をしてもらっても感謝するヤツなどひとりもいない。
おそらくサボる者が続出するし、
ちゃんと出席する生徒だって、
いわゆる内職に精を出すだけだろう。
そんな授業を担当する先生も、これまた面白いはずがない。
すなわち、何とも奇怪なことに、
生徒は喜ばず、先生も喜ばず、
生徒に得はなく、先生にも益はなく、
つまり誰もが嫌で、誰もが無駄だと知っている授業が、
これから延々と行われることになるのだ。
建前はともかく実際には、
そこで学んだ成果が残る可能性はゼロに近いんだから、
誰が見たって時間と労力の浪費というほかない。
じゃ、なんでそんなことをするのかというと、
ひと言でいうと文科省の体面を守るため、だろう。
だって受験生を危地に追い込むことを知りつつ、
それでもルールの遵守を求めるっていうんだから。
ここでは明らかに、
必要な学力教養を身につけさせなかったことでなく、
お上の指示を軽んじた点が問題視されているのだ。
生徒の受験の成否を危険にさらしても、
文科省の指示は履行せねばならないとは、
これはハンパな圧力じゃない。
これほどまでに国家が力を振るうのを見ると、
やっぱり教育は甘い行政サービスなどではないと
再認識させられちゃうわけで。
この際どこか一校くらい、
教育の自治を訴えて、文科省に楯突く高校はないもんかねえ。